正義感のコントロールが怒りのコントロール

私は正しい

その正義感が怒りにつながる

 

安藤俊介(あんどう しゅんすけ)

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。アンガーマネジメントの理論、技術をアメリカから導入し、教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。ナショナルアンガーマネジメント協会では15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアジア人としてただ一人選ばれている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』、『あなたの周りの怒っている人図鑑』等がある。著作はアメリカ、中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムでも翻訳され累計65万部を超える。

 

 

 

 

3章 正義中毒になる人、ならない人

正義中毒とはここ最近に作られた言葉です。正義中毒には2種類存在します。一つは急性正義中毒です。これは正義を短期間に大量に見ることになったため、正義の毒にやられてぐらいが悪くなってしまうことです。あまりに周囲の正義が多くなったため、自分から望んでいないのに正義を取り込むことになってしまったからです。

2つは慢性正義中毒です。これは正義が足りないと正義を探し続け、正義と思えるようなことを見つけては声高に主張するような状態です。正義に飢えているため、テーマは関係なく、ただ正義を振りかざしたいだけで、問題を解決していてもしていなくても構わないといった人のことです。何かを改善したいとかではなく、正義だと主張したいだけなので厄介です。

このように中毒になってしまう原因としては正義というのが単純に気持ちの良いものだからです。正義でいれば、人から褒められるし、認められます。自分が正義を感じている時は自分が正しいという気持ちに溺れることができます。また、社会と一体になっている感覚も得ることができます。2章でも紹介しましたが、不安な人はそれを埋めるために、何が正解で何が間違っているかはどうでも良いので、わかりやすい正義というものに飛びつきやすいのです。

また、今の世の中は多様性を重んじようとしています。多様性が進むと今まで自分が信じてきたことが裏切られることが増えます。すると、それに反発して批判の声が高まるのです。その際にも正義感が使用されます。

逆に正義を振りかざされた人はどう感じるのでしょう。正義とはわかりやすいため、主張されると反論が難しくなります。正義中毒の人と関わることがめんどくさくなるため、こちらからは反発しなくなります。納得いかなく、マイナスの感情を溜め込んでしまうので、具合が悪くなったり、別の標的に正義を振りかざして怒りをぶつけてしまうという悪循環が生まれてしまいます。

 

ここであなたの正義中毒度チェックがありましたので、チェックしてみました。

慢性中毒度:3個 軽度の慢性正義中毒

急性中毒度:5個 中程度の急性正義中毒

 

 

 

 

4章 正義感の手放し方

正義を手放してしまったら、正しく生きられないような気がしますが、ある種の正義感は手放してしまった方が良いです。それはビッグクエスチョンに当てはまらないことは少し緩めてみましょう。正義感が生まれる理由は個人のコアビリーフによるものでした。そのコアビリーフがビッグクエスチョンに当てはまらない不毛なコアビリーフだったら、手放してみましょう。

不毛なコアビリーフの例

・正しい人が幸せになる

・落ち度がなければ悪いことは起きない

・悪いことをしたら罰せられなければならない

・勧善懲悪

・努力は報われる

・倫理的、道徳的でなければいけない

・人には親切にするもの

・素直でいること

上記のことが誤っているということではありません。状況に応じてコアビリーフを緩めることもできるということです。緩めることによって寛容な気持ちを持つことができるので、正義中毒に陥ることを防ぐことができます。

 

実際の正義感の手放し方は以下の通りです。

以下のように分類できれば、自分の行動の判断基準になります。

①関わること/関わらないこと、できること/できないことを分ける

②人、物事に対する許容度を上げる

③自分にとって本当に大切なものを見つける

 

①関わること/関わらないこと、できること/できないことを分ける

正義感を振りかざしたくなった時、一度考えてみましょう。果たして関わるべきかどうか、できるかどうか、と。自分の人生にとって関わることであったら、行動しても良いでしょう。しかし、自分に関わらないのに無理に関わりに行っても何も意味がありません。また、自分にできることであれば、関わる選択肢もありでしょう。しかし、自分でどうしようもできない、変えられないことに関しては放っておくこともありでしょう。

分類すると以下の通りになります。

・関わりたくて、関わる必要があること:関わった方が良いことです。

・関わりたいけど、関わる必要がないこと:関わるかどうか考えた方が良いです。必要のないことに労力・時間をかけても良いか考えてみましょう。

・関わりたくないけど、関わる必要があること:関わった方が良い可能性が高いです。ただし、望んでいないので、中途半端になってしまう可能性も高いです。

・関わりたくもないし、関わる必要もないこと:間違いなく関わらなくて良いことです。

できるかできないかの判断も魔法が使えないと思うことです。自分の思うように相手、周りが変わることはありません。できることとできないことを素早く判断し、できないとわかった、すぐに切り替えましょう。

 

②人、物事に対する許容度を上げる

正義感の強い人は許容度が低い傾向にあります。合格点の基準が高く、100点か0点かで物事を判断しがちです。世の中は正解、不正解のみではありません。合格から不合格まではグラデーションのようになっていることが多いのです。許容度が高い人はその合否判定の基準が曖昧になっているので、多くのことを許すことができます。許容度が低いとマイナス感情・状態が大きくなってしまい、さらに許容度を下げる要因にもなってしまいます。

 

③自分にとって本当に大切なものを見つける

これは他人に振り回されないようにすることです。現在は情報が多くあるせいで、自分の基準、価値観が周りに影響されてしまいます。社会が、周りがやっているから正しい、少数派は間違っていると勘違いしてしまうのです。そこで、自分の大切なものを再確認してみましょう。見直していくうちに、これは誰かから大切だと思い込まされたもの等が出てくるはずです。ブランドものや学歴、年収等も社会の基準から影響されていることがあるかもしれません。自分にとって大切なものを見分ける方法として、ある質問を自分に問いかけてみます。「一人で無人島に行くとして、それでもそれを持っていたいか?」です。その時に持っていたくないと判断されたものは、周りからの目を気にして持っていたものを判断できます。ものを持っていることがステータスだと考えている人はそれがないと周囲に認められていないと感じるからです。自分には価値がないと思っているので、それ持っていないと不安で仕方がないのです。あなたにとって大切なものは何でしょうか。誰からも評価されなくても、自分だけがその価値を大切にできるというものが増えると、人の評価、社会の正しさに振り回されなくなります。